神楽演目

演目リスト

古典神楽創作神楽
神楽(かぐら)
  • 神楽(かぐら)<採物>
    ◆鈴・扇
  • [歌] 千早振る 玉のみすだれ 巻き上げて 神楽の声を聞くぞ嬉しき

    <解説>
    別名「鈴神楽」とも言い、神様が簾(すだれ)を巻き上げて神楽をご覧になり満足されている様を歌った神楽で、昔は二人で舞う時もあった。神楽殿よりは神殿でよく舞われる儀式神楽。

塩払い(しおはらい)
  • 塩払い(しおはらい)<採物>
    ◆幣・扇

  • [歌] 降りたまへ 降り居の庭には 綾を敷き 錦を並べ 御座と踏ましょや 

    <解説>
    別名「四方祓い」とも言う。儀式舞で東西南北の四方を清め又お払い事には良く塩を使い清められることから塩祓いと言われる。神楽を奉納するに当たって神楽殿を清める儀式舞。

眞榊(まさかき)
  • 眞榊(まさかき)<採物>
    ◆鈴・榊

  • [歌] 榊葉を 折り取り 手に持ち差し上ぐる 四方の神も 花とこそすれ 

    <解説>
    別名「手草」「柴舞」「榊舞」ともいう。榊と鈴を持って東西南北中央を祓い清める。儀式舞

神迎(かんむかえ)
  • 神迎(かんむかえ)<採物>
    ◆幣・鈴/後 幣・扇

  • [歌] 沖の瀬に 立つや白波 磯に寄る 我が身を清め 御座へ参ろや 

    <解説>
    石見神楽は大きく分けて儀式神楽と儀式外神楽とに大別されるが、中でも神迎えは儀式神楽の代表的なものです。 東は春・南は夏・西は秋・北は冬・中央は四季の土用司取り、木火土金水の陰陽五行説による舞で神楽を舞う所に神の降臨を 勧請する大切な儀式神楽である。

四神(よじん)
  • 四神(よじん)<採物>
    ◆鈴・幣・扇子
  • [歌] サイハイヤ 此処も高天の 原なれば 集り給え 四方の神々 

    <解説>
    別名「笠の手」「剣舞」「笠の舞」とも言う。東西南北四人の舞子が四方四角を清め神楽殿に神々を勧請する清めの儀式神楽。

四剣(しけん)
  • 四剣(しけん)<採物>
    ◆太刀

  • [歌] 沖の瀬に 立つや白波 磯に寄る 我が身を清め 御座へ参ろや 

    <解説>
    別名「太刀舞」「八ツ花」とも言う。四人の剣士が楽に合わせて歌いながら舞い、激しい動作は東西南北中央の五方を清める儀式神楽。

帯舞(おびまい)
  • 帯舞(おびまい)<採物>
    ◆帯

  • [歌] 紫の 雲の中より 現れて 八つ幡雄雄し あれをこそ見よ

    <解説>
    諸説によるとこの神楽は人皇十五代應仁 (おうにん)天皇御誕生の折、白幡赤幡が各四幡ずつ天より下り合わせて八幡になり、これを基に應仁天皇は八幡として祀られる様になったとか。幡を帯として持って四方を清める儀式舞。

神祇太鼓(じんぎだいこ)
  • 神祇太鼓(じんぎだいこ)◆出演/大太鼓・〆太鼓・手拍子・笛

  • [歌] 榊葉を 折り取り手に持ち 差し上ぐるには 四方の神も 花とこそすれ

    <解説>
    別名「胴の口」とも言う。神楽囃子の音曲を組み合わせた勇壮活発な囃子神楽です。大太鼓を中心として笛や締太鼓、そして手拍子など調子豊に奏でるのである。間断なく神楽歌を唄い上げながら「神々の魂を鎮め、神楽の斎場に入る人々の魂を振い裁たせて、願い事を祈祷する祝いの神楽」と見るべきと思う反面、大勢による神楽囃子の音曲は壮快ですらある。

天蓋(てんがい)
  • 天蓋(てんがい)
  • [歌] 天蓋の 縁の糸の 結ぼれは 解けよやもどけ 神の心を

    <解説>
    九本の網で九ヶの天蓋を別々に吊し、その綱を引くことによって天蓋を上下左右四方に動かす。神楽歌、楽に合わせて綱の操作で九ヶの天蓋があたかも生きものの如く動く有様は、曲芸と言うか正に神技と言う外ない。

茣蓙舞(ござまい)
  • 茣蓙舞(ござまい)<採物>
    ◆御座

  • [歌] 出雲には 神はあれども鈴がない 土器瓶(かわらけすず)で 神は遊す

    <解説>
    木(東)火(南)土(中央)金(西)水(北)の神をはじめ八百万(やおよろず)の神を招き舞台を作り、神殿の御座を清める意味から茣蓙を持って種々の秘術妙技の限りをつくす、跳躍して舞う曲芸的な神楽。

羯鼓・切目(かっこ・きりめ)
  • 羯鼓・切目(かっこ・きりめ)羯鼓
    <採物>
    ◆小太鼓・扇子 

    切目
    <採物>
    ◆幣・扇子/後 あそび 

  • 羯鼓

    <解説>
    宮中の雅楽で奏される際、左方楽に用いられる小さな太鼓のこと、台の上に据え、両手に持ったバチで両面を打って鳴らす。紀伊の国熊野の切目王子に仕える禰宜(ねぎ)が、熊野権現の宝物について説明するという内容。鞨鼓は高天原から紀伊の国、むろの郡のおとなし川に下ったもので、鞨鼓の片方を打つときは、天下泰平、国土安穏と鳴り、他の片方を打てば、五穀豊穣、商売繁盛と鳴る。このたびその鞨鼓を当社の例祭に出品するに当たり、最もよく鳴る場所に据えるから切目王子の御神体が出現された際にはよく拝まれよという。この演目は別項「切目」と一連の舞、石見神楽六調子の演目には「切目」のみでこの演目は見当たらない。 

    切目
    [歌] 熊野なる切目の王子の竹柏の葉は 髪挿しに挿いて御座へ参ろや

    <解説>
    石見神楽では鞨鼓の演目と一連の舞を形成している。演目は切目と介添の二人が登場して問答をする。内容は五行思想を含んでいて大変難解である。切目の王子は和歌山県日高郡目村に鎮座されており熊野神社の九九王子社の中の一つである。「切目」と「鞨鼓」とは、熊野から全国に出向いた御師、先達、または比丘尼(びくに)などにより一種の芸能として石見に残されたもののようである。

田植舞(たうえまい)
  • 田植舞(たうえまい)<出演>
    ◆大土神
    ◆巳年神
    ◆大歳神
    ◆他 代掻衆、苗持衆、早乙女、牛

  • [歌] 天土の 深き恵みを 仰ぎてぞ 豊葦原の 国は栄えん

    <解説>
    別名「三笠舞」とも言う。吾國の主食である稲の作り方、百姓には欠かせぬ牛の有りがたさ、神の威力貴さを説いた珍しい神楽である。

貴船(きふね)
  • 貴船(きふね)<採物>
    ◆鬼女 ― 女扇
    ◆男 ― 扇
    ◆晴明 ― 杖
    ◆三吉 ― 扇

  • [歌] からすみの 燃え立つほどに思えども 煙立たねば印とぞなし 

    <解説>
    別名「丑の時」ともいわれる。
    京都の下京辺りに住んでいた貧しい家の妻が、訳もなく離別させられた事を恨み、貴船神社に参籠して一念化生の鬼女となり、恨みを報いんとする。 一方夫の方は毎夜悪夢ばかりを見ており、安部の晴明公に悪夢の転じを依頼した処 「茅がやで人身大の人形を作り、七五三(しのめ)を張り、幣を立てる様にすれば安心」と教えられた。夫が教えられた通りにすると、ある夜鬼女が出て来て人形を夫と思ひ、生命を取らんと打ち打つする。呪いの舞である。 神楽とは異なるかも知れないが色々な所で貴舟明神は見かける。

黒塚(くろづか)
  • 黒塚(くろづか)<採物>
    ◆法印 ― 数珠・鈴
    ◆剛力 ― 金剛杖・小鈴
    ◆女 ― 扇・笠
    ◆悪狐 ― ザイ
    ◆三浦之介 ― 太刀
    ◆上総之介 ― 弓・矢

  • [歌] 陸奥の 安達が原の 黒塚に 鬼こもれりと 伝うはまことか

    <解説>
    別名「安達ヶ原」「白狐」とも言う。奥州陸奥の国、那須野ヶ原の山中に老狐が住いをなし巧(たくみ)に化て従来人に害をなし生血を吸っていた。ある日、裕慶法印が剛力と共に道に迷い奥山深く入り込み、剛力は女人に化けた老狐に喰い殺されてしまう。法印は念力により逃れた。そこに、帝より老弧退治の詔を受けた三浦之介、上総之介の両勇が通りかかり老弧を退治する。民話を神楽化した珍しい神楽である。

頼政(よりまさ)
  • 頼政(よりまさ)<採物>
    ◆頼政 ― 幣・扇子・刀
    ◆猪ノ早太 ― 弓・矢
    ◆鵺(ぬえ) ― ザイ

  • [歌] 時鳥(ほととぎす) 名をも雲井に 上るとも 弓張り月の 射るにまかせて 

    <解説>
    当の帝は第七十三代堀河天皇(1087年―1108年)病床の折、毎夜丑の刻になると御所の上を黒雲がたれ込み 頭は猿、手足は虎、体は牛、尾は蛇に似た鵺という怪物が現れ帝を病まして居りました。これを頼政が猪ノ早太と共に退治する場面、時鳥が鳴き弓張月(三ヶ月)に雲がかかった時打ち殺したとか?

鈴ヶ山(すずかやま)
  • 鈴ヶ山(すずかやま)<採物>
    ◆坂上田村麿 ― 幣・扇・刀
    ◆村人 ― 弓・矢
    ◆鬼頭 ― 幣・扇・刀
    ◆鬼 ― ザイ

  • [歌] 土も木も みな大君の 国なれば いずこか鬼の 住家あるらむ

    <解説>
    別名「田村」ともいう。第五十代桓武天皇(781年―806年)が坂上田村麿(756年―811年)に鈴ケ山の悪鬼人を退治するよう命じる。田村は早速鈴ヶ山の麓に行き、村人の道案内を受けて登山し悪鬼人を退治する。武勇伝である。後に闘将軍として名声高き武士になる。 

八幡(はちまん)
  • 八幡(はちまん)<採物>
    ◆神―弓矢
    ◆鬼―ザイ

  • [歌] 弓矢とる 人を守りの 八幡山 誓いは深き 岩清水かな 

    <解説>
    別名「宇佐八幡」「矢旗」とも言う。帯舞の解説で述べたように應仁 (おうにん)天皇御誕生の折、白四幡(はた)赤四幡が天から降り、合わせて八幡として八幡麻呂となり、第六天の悪鬼を退治される。天皇以前の武勇伝である。祭神、應神天皇、宇佐神宮、大分県宇佐市。

塵輪(じんりん)
  • 塵輪(じんりん)<採物>
    ◆仲哀天皇 ― 幣・扇子・刀
    ◆高麻呂 ― 弓・矢
    ◆鬼 ― ザイ

  • [歌] 石清水 今も流れの 末たえず 濁りなき世や 君を守らん

    <解説>
    塵輪という身に翼があって、神通自在に飛び行く大悪鬼が、何万という兵を連れて、全国の人々を殺しまわるので、時の天皇、14代の帝(みかど)、仲哀(ちゅうあい)天皇は、 高麻呂をはじめとする兵を従え、自ら天の鹿児弓、天の羽々矢の威徳を持って、この大悪鬼を退治しました。

    石見神楽の代表的な鬼舞で、二神二鬼の4人組の激闘となっており、その立ち合いの凄さが見どころです。 

天神(てんじん)
  • 天神(てんじん)<採物> 
    ◆菅原道真 ― 幣・扇・刀
    ◆藤原時平 ― 刀・鉄扇
    ◆随身 ― 弓・矢

  • [歌] 梅はとび 桜は枯る 世の中に さりとて松は つれなかるらむ

    <解説>
    道真は第五十六代清和天皇、五十七代陽成天皇も若き頃から良く存じており、特に光孝、宇多、醍醐三代の帝に仕える身となる。八九九年、藤原時平は左大臣、菅原道真は右大臣に任命され時の道真は、非常に帝に信頼が厚かった。これを妬み、時平の戯言により九〇一年道真は大宰府に左遷され、九〇三年五十九歳で死す。益田地方の天神では、道真も時平との合戦に参戦しているが、時平の死は道真の死後六年を過ぎてからである。

八衢(やちまた)
  • 八衢(やちまた)<採物>
    ◆宇津女 ― 三ツ鉾・鈴・扇
    ◆猿田彦 ― 幣・扇

  • [歌] 久方の 天より降す 玉鉾の 道ある国は 今の我が国

    <解説>
    ににぎの命(天照大御神の御孫)が降臨の時、鼻が高く背の高い猿田彦の命が道案内しようと待っているのを、道をふさぐ者と怪しく思われ、宇津女の命が問い正した。 猿田彦の命は、ににぎの命を日向の高千穂に案内する為待っている事を告げ、不審を解く。猿田彦の命は宇津女の命より広鉾を受け、ににぎの命を案内すると共に陸踏海路の導き守護神となる舞である。

武の内(たけのうち)
  • 武の内(たけのうち)"<採物>
    ◆武内 ― 弓・矢
    ◆住吉の神 ― 櫂・鈴
    ◆皇后 ― 幣・扇
    ◆賊 ― 太刀

  • [歌] 伏し拝む 社に神は 降りたまえ 心に水が 澄めば映ろう

    <解説>
    第十四代仲哀天皇の后、神功皇后が武の内の宿祢と共に住吉の神より海に投げると、潮が干て陸地になる干珠と逆に潮が満る満珠を授かり、外つ国を海路攻め、干珠満珠を使い外つ国の大将軍を敗る。降参した大将軍は、日本の神の使いとなる。

十羅(じゅうら)
  • 十羅(じゅうら)<採物>
    ◆十羅刹女 ― 三ツ鉾・扇・櫂・刀
    ◆彦羽根 ― 櫂・薙刀

  • [歌] 十羅刹 鏡の島は 高くとも ただよせくるは 沖つ白波

    <解説>
    別名「十羅刹女」ともいう。この神楽は、市内各神楽保存会 社中それぞれ特異性があるものの良く見られる神楽であるが、浜田以東ではほとんど見かけない神楽である。(出雲地方では舞われているとも聞いているが?) 十羅刹女は須左之男命の末娘で、血気盛んな美貌の女神である。彦羽根が対馬に渡らんとして舟を出した処、大時化に遭い、生命からがら着いた。ところが大八洲異国に帰る様、十羅刹女に説得される。彦羽根は聞き入れず、遂に戦いとなり珍しくも女神同士の戦さ神楽である。十羅刹女とは法華経によると鬼子母神とともに法華経の受持者を護持するといわれる十人の羅刹女で監姿、曲歯。華歯、黒歯、多髪、無厭足、持瓔珞、扉締、奪一切衆生精気を言い何れも美貌の持ち主であったと言われる。 

神武(じんむ)
  • 神武(じんむ)<採物>
    ◆神武 ― 幣・扇・刀
    ◆随身 ― 幣・扇・刀
    ◆賊 ― ザイ・刀

  • [歌] 日の本の 天業接ぎて 人の世の 肇国(ちょうこく)しろす 皇大君(すめらおおぎみ)

    <解説>
    別名「畝傍山(うねびやま)」とも言う。長らく高千穂にあった天孫族が良き地を求めて海路東方に向かうが、大和の国で豪族首長 長髄彦の猛烈な抵抗にあったものの勝利を得ることが出来、その天孫族の中に若き勇者が居た。この若者こそ後に建国の基礎を築いた初代天皇の神武天皇である。 

八十神(やそがみ)
  • 八十神(やそがみ)<採物>
    ◆大国主命 ― 三ツ鉾・扇
    ◆八上姫 ― 幣・扇
    ◆八十神 ― ザイ

  • [歌] 大己貴(おおなじむ) 少名御神の よろしくも 造り固めし 大八州國(おおやしまぐに)

    <解説>
    別名「大国主命(おおくにぬしのみこと)」とも言われる。因幡の白兎神話の続きとされている。大国主命には悪知恵の働く兄弟が多く、八上姫をわがものにしようと八上姫の恋する大国主命を計りごとをもちて殺さんとし、見破られて殺される。後に八上姫と結ばれ出雲地方の発展に盡され、後に國譲り神事にも盡される。

恵比寿・大黒(えびす・だいこく)
  • 恵比寿・大黒(えびす・だいこく)<採物>
    ◆大国主命 ― 三ツ鉾・扇/後 袋・小槌
    ◆事代主命 ― 釣り竿

  • [歌] 大己貴(おおなじむ) 少名御神の よろしくも 造り固めし 大八州國(おおやしまぐに)

    <解説>
    この神楽は一般的に、恵比寿大黒と言って「芽出鯛」鯛釣りをすることから婚礼を初め色々なお祝いのイベントに招かれることが多く、 最後に親子で掛け合いの台詞もめでたい内容でまとめられている。又大国主命、事代主命と言った親子の舞でもある為家運隆盛を願う意味から願う意味からも婚礼には欠かせないものとされている。

道がえし(ちがえし)
  • 道がえし(ちがえし)<採物>
    ◆神(武甕槌命) ― 幣・鈴・刀
    ◆鬼 ― ザイ・刀

  • [歌] 峰は八ツ 谷は九ツ 音に聞く 鬼の住むちょう あららぎの里

    <解説>
    別名「鬼(き)返し」とも言われる。鬼が地球上を荒らし廻り日本にも来て独占しようとするが武甕槌命(たけみかづちのみこと)の軍勢に阻まれ降参する。鬼は武甕槌命に、人畜の血肉を食とするより九州高千穂には稲穂を初め多くの食物(千五百ちいほ)が育成しこれらを食とするよう悟され、鬼が降参する珍しい神楽である。武甕槌命は後の国ゆずり神話である鹿島(国受)にも登場される神様である。

國受・鹿島(くにうけ・かしま)
  • 國受(くにうけ)<採物>
    ◆経津主命 ― 幣・扇・三ツ鉾
    (ふつぬしのみこと)
    ◆武美加槌命 ― 幣・扇子
    (たけみかづちのみこと)
    ◆大国主命 ― 三ツ鉾・扇子
    (おおくにぬしのみこと)
    ◆事代主命 ― つり竿・扇子
    (ことしろぬしのみこと)

  • [歌] 國中の 荒振者を 平らげて 鹿島香取の 神ぞ貴き

    <解説>
    別名「国譲り」「建御雷神」ともいう。天照大神(あまてらすおおみかみ)は皇御孫(すめみま)に国を譲る為、伊那佐の浜に居る大国主命の元へ二神の使ひを立て国譲りの相談をさせた。御子第一皇子 事代主命との承諾も得て談義も終わった折、第二皇子 建美那方神が千切り岩を持って現れ、国譲りに反抗し戦いとなりしが、負け戦になり諏訪まで逃げ降参し、国外不出とされ後に諏訪地方の守り神となる。大国主命はこれを機に社を建ててもらい、これが出雲大社の基といわれる。

西大和(にしやまと)
  • 西大和(にしやまと)<採物>
    ◆日本童男(やまとおぐな)― 幣・扇子・刀
    ◆熊襲猛(くまそたける) ― 幣・扇子・刀
    ◆長吉 ― 掃除道具 ◆酌取り女 ― 酒ビン・盃

  • [歌] 父のみの 父の御言を かしこみて 遥けき国に 出で立たすかも

    <解説>
    日本童男(日本武尊)は第十二代景行天皇第二の皇子で、当時九州熊襲猛と言う猛者が居り、これを退治する様命じ、 熊襲猛邸新築祝の折 姨(おば)君倭此売命(やまとひめのみこと)からもらった衣裳を身にまとい女装して、灼取り女として入り込み酒に酔わせて殺す。 死ぬ直前、我名を一字与えるので、これからは日本猛之命と名のる様言って死ぬ。 日本武尊は、西伐を終えて帰るなり、今後は東伐を命じられ、この説明は演目東大和(日本武尊)で説明しよう。

東大和(ひがしやまと)
  • 東大和(ひがしやまと)<採物>
    ◆日本武尊(やまとたけるのみこと) ― 幣・扇子
    ◆吉備武彦(きびのたけひこ) ― 幣・扇子
    ◆大和姫 ― 鈴・剣(二振)・守袋
    ◆兄ぎし弟ぎし ― ザイ
    ◆賊 ― 扇子・太刀(二振)

  • [歌] 此の国は 西の国より 治まれば 東の国は 波風もなし

    <解説>

    日本武尊は天皇の命により吉備武彦を連れ東国に向かい、途中、伊勢神宮に参り天叢雲剣を授かります。 駿河国に住む賊達は、尊を殺そうとして大野に誘い出し、四方から火をかけますが剣が自然に抜け草を薙ぎ払い、守袋の中の火打石で 迎え火をうち、賊を退治しました。その時、剣は草薙剣と改名されました。

岩戸(いわと)
  • 岩戸(いわと)<採物>
    ◆天照皇大御神 ― 榊(あまてらすおおみかみ)
    ◆児屋根命 ― 幣・扇( こやねのみこと)
    ◆太玉命 ― 幣・扇(ふとだまのみこと)
    ◆宇津女命 ― 三ツ鉾・鈴(うづめのみこと)

  • [歌] 月も日も 空に光が あらざれば 何処を神の 宿とたずねん 

    <解説>
    この神楽は、神楽の原点とも言われる神楽であり、事の始りは須佐之男命が、姉君天照皇大御神に身に余る悪事の末、 大御神は岩屋にこもられ世は一転の常闇となる。さて如何にして天照皇大御神を岩屋より出すかと、児屋根命、太玉命の御評定の結果、天の宇津女命に、面白おかしく踊らせ、 外が騒がしい為に様子を見ようと岩戸を少し開けられ、手力男命がすかさず岩戸を開け、天照皇大御神の御手を取り屋外につれ出し、世の中が明るくなったという神楽の演目です。 天の宇津女命のしなやかな舞い方と、手力男命の力強く荒々しい舞い方に加え、最後の笠の手の揃いの舞方も見ものである。 

鐘馗(しょうき)
  • 鐘馗(しょうき)<採物>
    ◆鐘馗 ― 茅の輪・宝剣
    ◆鬼 ― ザイ

  • [歌] 千早振る 荒振るものを 拂わんと い出立ちませる 神ぞ貴き

    <解説>
    この演目の主人公は須佐之男命で、天の岩戸騒動で天上界を追放され、地上界の唐の国(中国)に渡り、玄宗皇帝が永の病に伏せており、ある時鐘馗が悪鬼を追い拂う様子を皇帝が夢に見、 夢からさめてみると病もよくなっており、早速多くの画家に夢に見たまま描かせたところ、特に呉道子の描いた絵が夢に見た鍾馗(須佐之男命)と良く似ており、以来須佐之男命は唐の国では鍾馗と改名され、 病魔を除く神として崇められる様になり、特に左手に持つ茅の輪は薬草に例えられおり、古来より各神社で行われている夏越し祭りの輪潜り神事の輪は鐘馗の輪に例えられ、 輪を潜る折、左右にと三度潜る事により、家内安全、無病息災を願い適えられる魔除けの輪であると言われている。

大蛇退治(おろちたいじ)
  • 大蛇退治(おろちたいじ)<採物>
    ◆須佐之男命 ― 幣・扇子・剣
    ◆足名推 ― 杖・扇子
    ◆手名推 ― 扇子
    ◆稲田姫 ― 扇子

  • [歌] 青草を 結び束ねて みの笠を 作り初めます 須佐之男の神

    <解説>
    別名「大蛇」「八岐の大蛇」「蛇舞」「八戸」という。
    須佐之男命は数多の神々に外国へと神払いに払われ、永い流浪の旅の中で雨が降る時又風の吹く時に、日の本の国恋しさに新羅の国より、 舟に乗って日の本の国、出雲の簸の川の畔に着かれた。その時川上より箸が流れてくるのを見られ、川上に人が住んでいると思われて、川上を尋ねてみれば、 老夫婦が一人の娘を中に泣きくれておるので詳細を聞くと、この川上に、頭が八つに尾が八つある八岐の大蛇が住み、夫婦の間で育てた8人の姫を、7年の間に7人奪われ、ここに残った一人の娘も、 大蛇に奪われる時が近づき、いつ別れになるかと嘆く処と聞かされた。命は老夫婦に、大蛇は酒を好むものだから、色々な木の実を集めて酒を造り、高い所に姫を立たせ、 酒の中に娘の影を映すと、大蛇は姫かと思い、姫影の映った酒を飲み、酔い伏した時に十束の剣を持って退治すると言って、老夫婦に酒を造らせて、命の思う通りに八岐大蛇をずたずたに切り平らげて、 最後に尾を切る時に、剣の刃が欠けたのを不審に思い、断ち切ってみると、尾の中から一振りの剣が出てきました。その時、この川上に叢雲の立ち昇るのを見られて、 天の叢雲の剣(あめのむらくものつるぎ)と名付けて、天照皇大御神に献上されました。のちに草薙の剣と改名され、三種の神器の一つとなりました。命は稲田姫と結ばれて、出雲地方の治山治水に多く貢献され、 今も産業の神様として讃え祀られています。

五神(ごじん)
  • 五神(ごじん)<採物>
    ◆四神 ― 幣・鈴・扇子・太刀
    ◆埴安大王 ― 弓・矢・太刀・幣・扇子
    ◆使者 ― ザイ・太刀・幣・扇子
    ◆思兼命 ― 幣・鈴

  • [歌] この程に 五大王子を 請じ立て 処世堅め 村の鎮めに 

    <解説>
    別名「五竜王」「五郎王子」とも言い、五行を説く舞で、石見神楽の演目中で最大の長編である。 衣裳や面が最も豪華なのは、内容が農事に関係しており、尊重されているからで、農民の知識、哲学、倫理観を集大成したものといえます。 五神の中に見る木、火、土、金、水の名は第一王子が、青春大王、第二王子は夏赤大王、第三王子は秋白大王、第四王子は冬黒王子、 第五王子は埴安大王でいずれも国常立王の五郎王子である。春夏秋冬の四神はいずれも四季の中の一季を分配し、それぞれの方角を占拠し、 国士安隠に仲むつまじく、合意的に日常の生活を楽しんでいた。ところが土の神の埴安大王のみが、他の四神から差別的に冷遇視されたので、 信者を国常立王に派遣して領土の要求を依頼した。しかし四神たち天下はすべて四神の国土であると強調した。 この言葉を聞いた埴安は激怒し、軍勢を押し出して四神との間で格闘となる。この最中、式部の老人が登場し、五神たちに神勅を下し、分割して仲裁をする